ある日突然、物が二重に見えて、生活に支障が出る…。
この場合、多くの人が、真っ先に目の病気を疑うと思います。
しかし、眼科検査で異常がなかった場合、もしかすると目以外の部分の重大な病気のサインかもしれません。
物が2つにダブって見える症状を、複視と言います。
複視は、主に脳の神経の一つである動眼神経という神経に問題が起こった時に生じるものです。
ところが、目の検査では異常が見られず、目を動かしたり、光の調整を行う動眼神経も正常となると、ほかの病気の可能性があります。
例えば、糖尿病や甲状腺機能亢進症などの病気でも、複視の症状が起こる場合があります。
それでも検査に異常がないとなると、疑われるのは、未破裂脳動脈瘤という病気です。
脳動脈瘤が破裂するのが「くも膜下出血」ですが、未破裂脳動脈瘤では、脳の血管の一部が膨らんでいるものの、出血をきたしていないものを言います。
未破裂脳動脈瘤は、くも膜下出血の家族歴を有する人に、発症リスクが高い病気として知られています。
無症状で経過することも多い病気ですが、症状の一つに複視が挙げられます。
もちろん、ものが二重に見えるからと言って、必ずしも未破裂脳動脈瘤というわけではありません。
しかし、明らかな複視で悩んでいるのに、検査では異常がないという場合に、未破裂脳動脈瘤だったというケースは決して少なくありません。
また、未破裂脳動脈瘤は無症状の人も多い病気で、脳ドックなどでたまたま見付かるというケースもよくあります。
出血をせずにそのまま経過することもありますが、破裂をして出血をきたすと、くも膜下出血に至ることもあるので、十分な注意が必要です。
くも膜下出血を発症すると、未破裂脳動脈瘤の時とは大きく異なり、これまでに経験したことがないような強い頭痛や吐き気、嘔吐、時には意識を失うなど、重い症状が現れることがあります。
未破裂脳動脈瘤が大きくなると、ものがダブって見える複視の症状が現れやすくなるとも言われています。
もちろん、必要以上に恐れることはありませんが、複視は未破裂脳動脈瘤のかのうせいがある、ということだけでも覚えておくと、万が一の時の早期発見にもつながるはずです。
複視に潜む重大な病気の可能性については、頭の片隅にでも入れておくと良いと思います。