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臓器を作り出すメッセージ物質とは!?生命の誕生の神秘的な話

臓器をつくり出すメッセージ物質とは何か?生命誕生の神秘的な話

 

私たちの体の中には、心臓をはじめとし、胃や肺、腎臓、肝臓、腸など、たくさんの臓器があります。

そして、これらの臓器の一つ一つは、様々な細胞が合わさって構成されています。

例えば、胃という臓器を見てみても、胃酸をつくり出す細胞、胃酸を排出する細胞、胃壁を保護する粘膜を出す細胞、胃を動かす筋肉をコントロールする細胞、胃に存在する血管の細胞など、多くの細胞がそれぞれ機能することで、胃という臓器が正常にはたらいているのです。

こうした様々な役割を担う細胞の存在によって、それぞれの臓器は役割を果たすことができ、私たちの体が成り立っています。

 

人間の体には、200種類以上もの細胞があると言われています。

そもそも、生命の誕生は、たった一つの細胞、すなわち受精卵から始まります。

この受精卵が分裂を繰り返していくうちに、細胞は数多くの種類に分かれ(=分化)、臓器を形づくっていきます。

これらは外側からの操作ではなく、自然と行われるものです。

なぜ、細胞は勝手に分化を繰り返し、臓器をつくり出し、そして正常に動かすことができているのでしょうか。

 

これには、細胞同士が情報をやり取りするメッセージ物質のはたらきが関係していることが、最新の研究から明らかになってきています。

例えば、心臓という臓器をつくりだすメッセージ物質が「WNT(ウィント)」、肝臓をつくるメッセージ物質が「FGF」など、それぞれの臓器をつくるには、メッセージ物質の存在があるようです。

しかし、これらのメッセージ物質が、単体でそれぞれの臓器をつくり出せるわけではありません。

臓器の完成までには、数多くのメッセージ物質が関わることになります。

そこで、組み合わせが少し異なったり、タイミングが少しずれたりするだけでも、細胞が全く別の種類に変化してしまい、臓器をつくれなくなることも分かってきました。

メッセージ物質による細胞同士のやり取りは、非常に精密なものなのです。

 

このようなメッセージ物質の仕組みや、臓器の誕生の過程が分かってきた背景には、iPS細胞やES細胞を使った研究があります。

これらの細胞は受精卵に近い性質を持っていて、様々な細胞に分化していく様子を、シャーレの上で実験して調べることができるようになりました。

現在、世界中の科学者たちが、ⅰPS細胞やES細胞にメッセージ物質を与えて、様々な臓器に導く方法を研究しています。

臓器をつくり出す仕組みは非常に複雑で、まだまだ明らかになっていない部分も多くありますが、このような研究により、細胞や臓器の謎、そして生命誕生の謎が、徐々に解き明かされてきているのです。